もう一度読み直すくらいの余裕がほしい

印刷が終わったばかりの記事は、怖くて読めません。

あれだけ注意して校正したはずなのに、後戻りできない段階になって一目で気付く。

血の気が引く感覚は、思い出すだけで嫌なものです。

対策の一つとして、校正と原稿作成に時間的な余裕を持たせるようにしています。

現在勤めている新聞社は、校閲専任者がおらず、編集部全員が事前に紙面を確認しているものの、忙しくなれば自分が書いた記事を最優先でチェックしがちです。

事実や固有名詞は、書いた本人しか分からないこと。それに最後まで確認するのは、記者としての責任です。

慣れが過信を生み、時間に追われて校正を疎かにした結果、痛い目にあったことが何度もありました。

(詳しくは「出品記事で大失態」をお読みください)

記事に限った話ではありませんが、他人の目に触れる文章は、勢いに任せて手放さず、事前に確認する癖をつけるだけで結構防げます。

相当なボリュームの文章をチェックするときは、すきま時間で小分けにするよりも、あらかじめスケジュールに組み込んでおいた方が、文脈を整理しながら確認しやすくなります。

原稿を一日寝かせる

引用した箇所はP100「クセ」に掲載されています

レイアウトが終わったあとの校正は、あくまで水際の対策。

「余裕を持たせる」という点では、原稿を出す前の時間に重点を置きたいです。

記事のボリュームや内容にもよりますが、悩みながら消したり書いたりするよりも、流れ(ノリ)に任せて一通り完成してから見直した方が、文章に勢いがあって読みやすいし、効率も良いと思います。

その見直しが甘ければ、校正の苦労が倍増します。

あくまで私の経験ですが、

  • 変換ミス
  • 表記の不統一
  • 固有名詞の間違い

といったケースは、書けたことの達成感で脳内変換されていることが原因です。

だから、時間を開けて、冷静に読み直すと気付くことが多い。

しかし、締切に追われれば「原稿作成→校正→修正→校正」の間隔が短くなり、頭を冷やす暇がありません。

作家の池波正太郎氏は、『男の作法』(新潮文庫発行)でこのように書いています。

たとえ締切り前の一日だけ自分の手許に置いておくだけでも作品はましになる。読み返して手を入れることによってね。だから自分は一日だけでも余裕をとって書き上げる、と。これは実際、そのとおりだと思いますよ。

締切り前にでき上がっているものを、もう一度見れば、必ず直すところが出てくる。それを直してから渡せば、あとから単行本にするとき何の手入れもいらない。

締切りギリギリでやった仕事は出来栄えがよくないばかりでなく、自分の健康にも有害なんだよね。締切りに迫られてやるのは綱渡りなんだ。そうじゃなくたって、ぼくらの仕事は綱渡りなんだ。そうすると健康を害してくるわけですよ、どうしたって。結局は、それが作品の質を低下させ、だんだん読まれなくなってくるということもあり得る。

私の場合、原稿を寝かせることができるのも、日刊紙の記者ではないことも大きいと思います。

心身ともに健康を保つだけでなく、質の高い記事を目指すためにも、時間的な余裕を持ちたいものです。