経験と予定調和
- 年月を重ねるごとに、経験だけで乗り切ることが多くなってきた。
新聞制作に使える時間を割り出して、必要な工程ごとに細分化する。
紙面構成の検討、取材申し込み、下調べ、取材・撮影、原稿作成、校正……ある程度見えている。
限られた時間のなかで、どの程度割けるのか。
経験から全体を把握しているからこそ、効率的に動ける。
できるかぎり就業時間内で収めることで、心も、身体も安定して働けている。
「安全運転こそが信条」と言っていいかもしれない。
どこで線を引くか
もう一方から見れば、予定調和から抜け出すことができていないということだ。
業界紙といっても、カバーすべき守備範囲は広く、やろうと思えば、どこまでも深く掘り下げられる。
欲がつきない。際限のない仕事だからこそ、記者に面白みも感じる。
締切というゴールはあっても、情報の分析や表現に正解はない。
他者から良し悪しを判断されない状況にあるため、自分で線を引くしかない。
その線を「就業時間」としたのが、現在の自分である。
もちろん締切に間に合わなければ、残業もするし、休日出勤もする。
でも、それは責任感から起こっている行動であって、「使命感ではない」というのが本音だろう。
業界紙記者になったばかりの自分が見たら、少しがっかりするかもしれない。
当時思い描いていた理想と照らし合わせれば、ギャップが大きかったことも確かだ。
「やりきった」と言えば嘘になるし、後悔もある。
時間が経つにつれて、自分がやりたいことと、まわりが期待していることに大きな差が生まれている。
公的な立場にふさわしい期待に応えることも楽しく、達成感もある。
ただ、その差を埋めることは、個人の努力だけでは難しくなっている。
だからこそ転職を選んだ。
生涯現役でいるためには、過去の経験だけで乗り切れない。
「とにかく学び、実践せねば」と思うこの頃である。
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