口下手でも、業界紙記者は務まる

2024年5月16日

鋭い質問を投げかけて、スクープを取ってくる。

記者には、そんなイメージがあるのではないでしょうか。

コミュニケーション能力に長け、物事を俯瞰して見ることができ、情報分析力にも優れている。

信頼から着実に人脈を築き、取材先が「ここだけの話…」と打ち明けてくれる。

そんな理想的な記者像を思い描いて時期が、私にはありました。

業界紙記者になって15年。理想とは遠くかけ離れたところにいます。

全国紙、地方紙、経済紙、専門(業界)紙と、取り扱う情報によって、記者に求められる能力は異なっていると思います。

「思います」と書いたのは、業界紙2社しか経験がなく、本で読んだり、まわりの記者さんから聞いたりした程度しか知らないからです。

その数少ない経験からでも言えるのは、口下手でも、相手から話を聞き出すことはできるということです。

後悔と改善点

「相手に失礼なことを言ったらどうしよう」

「何を話したらいいかわからない」

記者になってから、4、5年はそんなことばかり考えていました。

できるだけ雑談を避け、沈黙しないように矢継ぎ早に質問する。

そして用意していた質問が出尽くしたら、さっさと帰る。

しかし、いざ原稿を書こうとすると、情報が足りなくて後悔する。

この繰り返しでした。

少しずつ改善できたのは、以下の点を着実に取り組むようになったからです。

  • 訪問の意図(テーマ)と予定時間をはっきりさせ、取材先にも事前に伝える
  • 記事のイメージ(文字数・写真点数・レイアウト)をある程度もっておく
  • 質問は、話が広がりやすい幹の太い項目、どこでも聞いている共通の項目を用意しておく
  • 取材先(会社・人物)の情報は、可能なかぎり調べておく
  • 撮影は、取材の終わりに行う

私が緊張しているように、取材に協力してくださる方も少なからず緊張しているようです。

「『何を聞かれるんだろう。間違ったことを言わないかな』と心配していました」と言われることもありました。

緊張を和らげるために、取材の意図、おおよその時間、主な質問項目を伝えています。

こういった手順を踏まえることで、私も下準備をせざるを得なくなります。

下準備さえしておけば、情報の鮮度をはかる基準にもなります。

それに

「〇月〇日、A紙に載っていましたね」

「2年前に掲載されたB誌のインタビューで話していた、あの件はそういうことなんですね」

と会話の要所にはさめば、会話も広がり、相手に対して関心があることを示すことができます。

会話の弾む弾まないにかかわらず、時間の経過とともに、相手の緊張も少なくなっているので、撮影は取材の最後にまわしています。

同じ質問を投げかける

会話の手札を前もって用意しておくことで、気持ちも大分楽になりました。

取材も、太い幹から枝葉が広がるように、気になったことを質問すれば、情報が増えてきます。

ただ、相手は貴重な時間を割いてくださっているので、もちろん質問に優先順位をつけています。

あとは業界の関心事に関して、あえて同じ質問をぶつけるようにしています。

  • 働き方改革
  • 人材育成と技能継承
  • リクルート活動
  • 設備投資の基準
  • 景況感

などを投げかけることで、動向らしきものが見えてきます。

とくに日本は、少子高齢化が進行し、生産年齢人口の減少が予想されています。

AI、ロボットなどが身近になるとは言っても、人や投資なくして、競争力は強化されません。

「調査報道」とまではいかないものの、私なりの情報の分母を増やしていきたいと思っています。