口下手でも、業界紙記者は務まる
鋭い質問を投げかけて、スクープを取ってくる。
記者には、そんなイメージがあるのではないでしょうか。
コミュニケーション能力に長け、物事を俯瞰して見ることができ、情報分析力にも優れている。
信頼から着実に人脈を築き、取材先が「ここだけの話…」と打ち明けてくれる。
そんな理想的な記者像を思い描いて時期が、私にはありました。
業界紙記者になって15年。理想とは遠くかけ離れたところにいます。
全国紙、地方紙、経済紙、専門(業界)紙と、取り扱う情報によって、記者に求められる能力は異なっていると思います。
「思います」と書いたのは、業界紙2社しか経験がなく、本で読んだり、まわりの記者さんから聞いたりした程度しか知らないからです。
その数少ない経験からでも言えるのは、口下手でも、相手から話を聞き出すことはできるということです。
後悔と改善点
「相手に失礼なことを言ったらどうしよう」
「何を話したらいいかわからない」
記者になってから、4、5年はそんなことばかり考えていました。
できるだけ雑談を避け、沈黙しないように矢継ぎ早に質問する。
そして用意していた質問が出尽くしたら、さっさと帰る。
しかし、いざ原稿を書こうとすると、情報が足りなくて後悔する。
この繰り返しでした。
少しずつ改善できたのは、以下の点を着実に取り組むようになったからです。
- 訪問の意図(テーマ)と予定時間をはっきりさせ、取材先にも事前に伝える
- 記事のイメージ(文字数・写真点数・レイアウト)をある程度もっておく
- 質問は、話が広がりやすい幹の太い項目、どこでも聞いている共通の項目を用意しておく
- 取材先(会社・人物)の情報は、可能なかぎり調べておく
- 撮影は、取材の終わりに行う
私が緊張しているように、取材に協力してくださる方も少なからず緊張しているようです。
「『何を聞かれるんだろう。間違ったことを言わないかな』と心配していました」と言われることもありました。
緊張を和らげるために、取材の意図、おおよその時間、主な質問項目を伝えています。
こういった手順を踏まえることで、私も下準備をせざるを得なくなります。
下準備さえしておけば、情報の鮮度をはかる基準にもなります。
それに
「〇月〇日、A紙に載っていましたね」
「2年前に掲載されたB誌のインタビューで話していた、あの件はそういうことなんですね」
と会話の要所にはさめば、会話も広がり、相手に対して関心があることを示すことができます。
会話の弾む弾まないにかかわらず、時間の経過とともに、相手の緊張も少なくなっているので、撮影は取材の最後にまわしています。
同じ質問を投げかける
会話の手札を前もって用意しておくことで、気持ちも大分楽になりました。
取材も、太い幹から枝葉が広がるように、気になったことを質問すれば、情報が増えてきます。
ただ、相手は貴重な時間を割いてくださっているので、もちろん質問に優先順位をつけています。
あとは業界の関心事に関して、あえて同じ質問をぶつけるようにしています。
- 働き方改革
- 人材育成と技能継承
- リクルート活動
- 設備投資の基準
- 景況感
などを投げかけることで、動向らしきものが見えてきます。
とくに日本は、少子高齢化が進行し、生産年齢人口の減少が予想されています。
AI、ロボットなどが身近になるとは言っても、人や投資なくして、競争力は強化されません。
「調査報道」とまではいかないものの、私なりの情報の分母を増やしていきたいと思っています。
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