ポジショントークが生まれる原因と対策~問いかけの質を上げるには~
取材しているとき、「ポジショントークだな」と感じるときがある。とくに、景況に関する質問は高確率でそうなる。
なんのひねりも、工夫もない質問を投げかけた記者が間違いなく悪い。ただ、こちらが「業界のことはある程度分かっていますよ」オーラを出しながら、下調べした情報に基づいた質問でも、ポジショントークが返ってきたときは、少し頭を抱えたくなる。
ニュースは、何を言うかではなく、誰が言うかが大事である。経営者、管理職、研究者、業界団体幹部など、実名と肩書が記事として残る。責任が伴うからこそ、当然慎重にもなる。その延長上に、ポジショントークがあるわけだ。
記者の質問が悪い
「当社の売上は、〇〇工業会の統計データとほぼ同じ動きですね」。連続インタビューと題して、ある業界のメーカー経営者数名に取材したところ、事前に裏で打ち合わせがあったかのようなコメントをもらった。
一人が取材したわけではなく、担当記者で手分けして、原稿に起こして分かったことだ。思い返してみると、私が草案として部内で共有した取材申込書に書いた質問が悪かった。
「米中貿易摩擦によって、厳しい受注環境が続いています。そのようななかで、貴社の売上状況と展望をお聞かせください」と問われれば、そのような答えが出てくるのもうなずける。
商流が複雑なうえに、市場がグローバルだった場合、原因の特定は難しい。一方で広範囲に影響を与える理由には事欠かない。リーマン・ショック、米中貿易摩擦、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、物価高騰などがそうだ。
どれも納得する理由だ。腹落ちしやすいからこそ、さらに突っ込んで質問する勢いが削がれる。言い訳になるが、業界のことがある程度分かっている(つもり)になっているからこそ、「これ以上聞いても、何も出てこないだろうな…」という気持ちになる。
投げる球はまだあるはず
相手の立場をおもんぱかりながら、どうやって現状や本音を聞き出すか。そう考えたとき、以下のような選択肢があるのではないか。
→「さっき答えたように…」と返される可能性が高い△先方の答えをオウム返しして、こちらの解釈の是非を問う
→言質を取るカタチになるので、嫌がる取材対象者もいる〇諦めるふりをして、場の雰囲気が和らいでから、改めて質問する
→取材中、関連するキーワードが折々に出てくることもあるので、「まとめ」として話題に出しやすい×後日、広報担当者に書面で追加質問する
→間違いなくポジショントークの答えが返ってくる
投げる球のパターンを変えるためには、事前情報が大事だ。これまでの取材で得た情報、他紙も含めた過去の記事、ニュースリリース、SNS、動画など、時間が許されるのであれば知っておいた方がいい。
具体例を上げて、情報を引き出すというよりも、取材対象者が「ここまで調べて臨んでいるのか」と思ってもらうことが目的である。そう思ってもらえたとき、ポジションから少し降りて、話やすくなるのではないだろうか。
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