【解説】事業再構築補助金第13回公募のポイント ~事前着手廃止も含めて大きな変更なし

2025年1月12日

事業再構築補助金の第13回公募が始まった。
この発表は、おそらく誰も予想していなかったに違いない。

今年は、ものづくり補助金、新事業進出補助金、中小企業加速化補助金など、設備投資に活用できる支援策が予定されているため、今回の公募に照準を合わせて計画する事業者は少ないかもしれない。

スケジュールは、

公募開始:2025年1月10日(金)
申請受付:調整中 ※2025年1月10日時点
応募締切:2025年3月26日(水)18:00
補助金交付候補者の採択発表:2025年6月下旬~7月上旬頃(予定)

と、以前から備えていなければ対応が難しいタイトな印象を受けた。

しかし、申請要件の間口が広く、建物費が計上できるメリットは大きい。
そこで、第13回公募で最後となる事業再構築補助金のポイントを考えてみた。
公募要領は2025年1月10日に発表された1.0版を参考にしている)

経済社会の変化に対応する挑戦を支援

事業再構築補助金は、

    • ポストコロナの経済社会の変化に対応する
    • 日本経済の構造転換を促す

中小企業の挑戦を支援することが目的だ。
今後成長が期待される分野に進出することが、申請の大前提となる。

第12回公募からほぼ変更なし

昨年実施された第12回公募の公募要領と読み比べるかぎり、申請要件も含めて大きな違いはない。
補助金の目的から「新型コロナウイルス感染症の長期化」が消え、ポストコロナの変化に対応する色が濃くなった印象だ。

個人的に気になった前回との違いは、以下のとおりだ。

<なくなったこと>
・事前着手制度
→交付決定日よりも前に購入契約(発注)した経費は対象外
・コロナ回復加速枠(通常類型)
→加速枠は最低賃金枠のみ実施/コロナ借換は任意要件に
・サプライチェーン強靭化枠
・サプライチェーン加点
・事業計画書に記載されている申請者特定情報のマスキング処理<追加されたこと>
・「専ら(もっぱら)補助事業」の定義づけ
・成長マッチングサービス登録加点
事前着手制度は、第12回公募時点で「原則廃止」として経過措置が取られていたため、大きな驚きはない。
申請枠も、これまでにも回ごとに要件を含めた変更があるため、改めて特筆すべきことではないだろう。

新規事業を目的とした支援であることを強調

それよりも私が関心をもったのは、公募要領1ページに書かれた「専ら補助事業」の定義づけだ。
第13回公募要領には、以下の文言が追記(ラインマーカーも原文どおり)された。

※「専ら補助事業に使用」とは、新たに取り組む事業として事業計画書に記載されている事業にのみ使用することを指しています。過去から行っている既存の事業や、事業計画書に記載されている事業とは異なる事業に取得財産を用いる場合には、「専ら補助事業に使用」しているとはみなすことができず、補助金の対象外として取り扱います。

専らには、「他はさしおいて、ある一つの事に集中する」のほかに、「主要」との意味もある。
「主要」は、解釈次第でさまざまな受け取り方ができるため、たとえば導入した設備の用途を「新規事業99%:既存事業1%」と考えて、事務局に問い合わせた事業者もいるだろう。

そのあいまいな部分を線引きさせるために、このような注釈を入れたように思える。

まず概要資料で全体把握を

公募要領の前に、中小企業が発表した概要資料を読むことをおすすめする。
申請要件、各枠の特徴、賃上げの考え方、対象外事業、審査の観点などがコンパクトにまとめられている。

全体像もこのような表でまとめられている。

今回も3者以上の相見積もりが必要

概要資料に記載されていないことで押さえておきたいのは、建物費、機械装置・システム構築費などで相見積もりが必要な点だ。

経済性の観点から、可能な範囲において相見積もりを取り、相見積もりの中で最低価格を提示した者を選定(一般の競争等)してください。契約(発注)先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜き)以上になる場合は、3社以上の同一条件による相見積もりを取ることが必要です。

出所:公募要領(1.0版)P.36

これまでの公募回でも求められてきたことながら、時間がかかるため、申請準備段階から取得しておきたいところである。

機械装置・システム構築費は単価10万円以上

これも変更点ではないが、機械装置・システム構築の注意点も挙げておきたい。

※8 補助対象となる機械装置等は、単価10万円(税抜き)以上のものとします。
※9 100万円(税抜き)以上のシステム構築費を計上する場合は、実績報告時に、要件定義書(費用見積書を含む)または開発費用算出資料(作業単価、作業工数及び作業時間、固定費用、作業担当者)、作業担当者勤務記録等)を提出する必要があります。

出所:公募要領(1.0版)P.32

当然のことながら、事業再構築補助金の目的に合致した取り組みであっても、ルールから逸脱した申請は認められない。
申請検討の初期段階で、公募要領を熟読することがリスクを減らすことにつながる。