「ものづくり補助金」2025年も実施へ、前回公募と比較してみた

令和6年度補正予算が昨日成立した。
補助金支援に携わっていた身として、ものづくり補助金の動向が気になっていたため、自己研鑽と備忘録も兼ねて投稿する。

ものづくり補助金の正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。
生産性や付加価値の向上につなげることが目的のため、申請できる対象業種も幅広い。

設備導入のきっかけになることから、機械・システムメーカーや専門商社が積極的に提案する。
「需要の先食い」と言えなくもないが、少ない資金負担で収益拡大につなげられるのは、中小企業にとって間違いなくメリットだ。

事務局決定後に発表される公募期間と要領が待ち遠しい。

高付加価値化枠の一本化、収益納付なしで使いやすく

中小企業庁のホームページに、公募概要のリーフレットが掲載されている。
補助率は1/2~2/3。大幅な賃上げに取り組む場合、補助上限額が最高4,000万円まで引き上げられる。

申請枠は、以下のとおり「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」に分かれる。

出所:中小企業のリーフレットから抜粋

製品・サービス高付加価値化枠は、前回の18次公募であった「通常枠」と「成長分野進出類型(DX・GX)」が一本化されたことで使いやすくなった。
それ以上に注目すべきは、受領した補助金の額を上限としていた収益納付が求められなくなったことだ。

公募概要を読むかぎり、申請のハードルが下がり、メリットが増えた印象が強い。

賃上げの水準が上がった

基本要件も見直された(前回公募からの変更箇所:マゼンタ※当ブログで編集)された。

中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発を行い、

1. 付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加

2.1人あたり給与支給総額の年平均成長率が
事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
または給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加

3.事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準

4.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)

の基本要件を全て満たす3~5 年の事業計画に取り組むこと。
最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとします

出所:中小企業庁

給与支給総額の水準を引き上げたのは、補助金の目的に掲げている「持続的な賃上げ」の効果をより高める狙いだ。

最低賃金引上げ特例を新たに設けたのも、その施策の一つ。
指定する一定期間に3か月以上、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の30%以上いる場合、補助率を2/3に引き上げるという。

人手不足が顕在化する中で雇用定着率を維持するためには、賃上げは避けて通れない。
しかし、今回の要件見直しが、申請を検討する事業者にとって二の足を踏むことにもなりかねない。

建物費が対象になる新事業進出補助金

補正予算の成立で、もう一つ気になるのが「新事業進出補助金の創設」である。
予算額は1,500億円。既存基金が活用される。

中小企業庁が発表した補正予算案の資料を読むかぎり、事業再構築補助金に代わる支援制度といえる。

●中小企業・小規模事業者の成長につながる新事業進出・事業転換を重点的に支援するための新たな支援措置を創設

要件 :企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(新規性)や賃金要件等
補助対象経費:建物費・機械装置費・システム構築費・技術導入費・専門家経費 等

建物費が対象になるのは、ものづくり補助金に比べてメリットが大きい。
新事業の定義によって、申請できる可能性が十分あるだけに、今後の動向に注目したい。