調整役という生き方
年月の経過とともに、記事を書く時間が少しずつ減っています。
書くスピードが上がったわけでも、取材する機会が多くなったわけでもありません。
進行管理(格好良く言えば「ディレクション」)に、時間と労力を割いているからです。
新聞記者として入ったはずなのに、取引先の広報誌をいくつか担当しているうちに、社内においても調整の役割を果たすようになりました。
「どうだったっけ?」
「どうしたらいいですか?」
といった声を聞くたびに、モヤモヤしていた経験がある分、先行して特集の紙面構成案やスケジュールを指示した方が楽だと思ったからです。
「手垢のついた」紙面になっていないか
記者一人が持っている情報には限りがありますから、あまりに先走り過ぎると、我見に陥って、自分に取ってやりやすい「手垢のついた」紙面になってしまいます。
だからといって、各自が書きたい内容を単純に足すのもテーマ性がない。
本来であれば、ゼロの状態から情報を持ち寄って意見交換したいところですが、ひとまず紙面構成案を見てもらって、「思考の抜け漏れがあったら指摘してください」といった方法に留めています。
検討にあたって、私が心がけているのは
- いきなり意見を求めない
- 情報や人脈でマウントを取らない
- 意見に対して、まず受け止める
- 反対には代替案を出すように伝える
です。
直感的な意見も重要ですが、「今すぐ答えられない=考えていない」と結論づけるのは短絡的だと思っています。
価値ある情報をいかに分かりやすく伝えるかを考えるうえで、自分のなかで熟慮する時間は大切です。
記者として業界に長くいれば、情報や人脈があるのは当然です。しかし、違う角度から見れば、経験に頼った固定観念に縛られているとも言えます。
読者のための打ち合わせを「自分は頑張っているアピール」や「マウント合戦」の場に成り下がらせないように心がけています。
言い換える能力
いくつかの歯車同士が長時間にわたってスムーズに回るには、潤滑剤が必要です。
目標とスケジュールの共有、進行管理、方向修正に加えて、意見や不満を言い換えて伝える能力が求められると思っています。
とくに、外部から編集を委託されている媒体の場合、発注者の意図を汲み取りながら、社内の制作担当者の負担も考慮しなければなりません。
「お客様(発注者)がこう言っているから」ではなく、指示した理由を伝えれば、無理だった場合でも制作担当者も代替案が出しやすいはずです。
書くことが本来の仕事ながら、社内、社外問わず、板挟みになるのは辛いものです。
それに転職活動においても、調整や進行管理の実績をどう表現したらいいのか…。投げ出せるのではあれば、記者の仕事に集中したいところです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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