【読書】News Diet-情報があふれる世界でよりよく生きる方法
Yahoo!やLINEを開くたびに、ついついニュースを読んでしまいます。
見出しに魅かれて読み、気になる関連記事をクリックして、あっという間に時間が過ぎていく。
まったく関係がない情報でも、気持ちがざわつくことに、自分のことながら「もったいないな」と感じていた頃、手に取った本が『News Diet』(ロルフ・ドベリ著/安原実津訳/サンマーク出版)です。
業界紙記者という仕事に携わっていながらも、「世の中の動きを知ることが、果たして自分の人生にプラスになっているのか」と改めて考えさせられる一冊でした。
新聞、テレビ、ラジオ、インターネット、スマートフォンアプリなどから、いつでも情報が手に入れられます。
ニュースを読む(聞く・見る)ことが当たり前になっているからこそ、時間を消費していることに気付かない。
1日平均30分であれば、1年で182時間、約1週間分にもなります。
著者は「ニュースは『時間の無駄である』」として、以下の点を理由に挙げています。
- ニュースを消費すること自体に時間がかかる
- ニュースによって逸れた注意をまたもとに戻すのに時間がかかる
- ニュースを消費すると、注意力はそのかなりあとまで損なわれたままになる
※本書から抜粋・要約
もちろん情報の価値は、人によって違います。
意思決定の判断材料にするため、知的好奇心を満たすため、会話を盛り上げるため、その優劣を他人がつけるものではないと思います。
しかし、著者は「それだけの時間を無駄にして、あなたは一体どんな対価を手にできるというだろう」と問いかけています。
そこまで突き詰める理由は「倹約すべき唯一の財産は『時間』」だから。
家族やキャリアや趣味のために、毎年一カ月の余分な時間を手に入れたければ、ニュースを断つことだ。これほど多くの時間の余裕を生み出す方法はほかにはない。
何かを得るには、何かを失う「トレードオフ」を改めて理解する必要がありそうです。
奪われる集中力
ニュースの見出しは、受け手の関心を引くために、情報の核となる部分を少ない字数(短いフレーズ)で書きます。
本文を読まなくても、大まかな内容を伝える役割もあります。
そのため、インパクトのある表現を通りすぎて、誇張された「釣り」と言われるような見出しがあるのも確かです。
読者(視聴者)がついつい見てしまう仕組みになっている。時間だけでなく、集中力も奪われているということです。
本書では「長期記憶」と「ワーキングメモリ」(必要な情報を一時的に保持する役割)の関係性にも言及しています。
脳のなかで情報がワーキングメモリから長期記憶に移行するには、非常に細い道を通らなくてはならない。あなたが理解し定着させたいと思い情報はすべて、この地点を通過する必要があるが、抽象的な情報の場合は集中しなければ移行はうまく運ばない。
ところがニュースは集中を妨げるため、ニュースを消費すると、自発的に情報の理解を阻んでしまうことになる。
情報を処理して記憶するにも、集中する時間が必要です。
押し寄せる情報に自分から向かっていくようでは、内容も理解できないし、自分の考えも深まりません。
興味深いのは、「ニュースを消費する」ことが脳にも影響を与えているということ。
ニュースを消費すると、脳の生理的な構造が徐々に変化する。短い情報にざっと目を通すときに必要な脳の領域を鍛えることになる。そしてそれにともない、長い文章を読むことや、思考をつかさどる回路は退化する。
私には心当たりしかありませんでした(汗)。
著者は、本や長文記事を読むことを推奨しています。
起こった事実だけでなく、表面的な出来事だけでなく、背景、発生要因などが書かれているからです。
本書は、ニュースの裏側にある発信側の思惑、求められるジャーナリスト像にも触れています。
私にとって耳の痛い話ばかりでした……。
その点については、別の機会で紹介できればと思います。
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