物分かりの良い記者を演じる

手応えのない取材が続いている。相手が悪いわけではない。勇気がなくて突っ込んだ質問ができなかったり、中途半端な理解のままで話を進めてしまったりしているからだ。

取材の目的ははっきりしている。できるかぎり事前情報を把握し、記事に必要な質問もある程度想定して臨んでいる。それでも取材が終わった後、「きちんと取材ができていないのでは?」との不安がつきまとう。

固有名詞や数字を中々答えてもらえず、抽象的な話に終始することがよくある。私が取材の流れをコントロールできないのは、相手が答えにくそうな態度を示したとき不機嫌になることを恐れて、市場動向や顧客の反応のような質問を投げかけているからだろう。

相手への配慮というよりも、物分かりの良い記者を演じているに過ぎない。こういうときは読者よりも取材先に顔が向いている。取材の手応えがないのも当たり前だ。

イベントもの、製品記事であれば、そういう方法でも乗り切れる。ただ他紙に先駆けてスクープを取ることはできないし、業界を俯瞰した読み応えのある動向記事は書けない。専門紙記者として、恥ずかしく実に情けない状態だ。

これまでの取材では、相手に「こいつは業界のことを分かっているやつだ」と信頼してもらうことに重きを置いてきた。業界の情報や専門用語を小出しにしながら、記者っぽく振る舞う。上手くはまれば共感が生まれ、取材は盛り上がる。

その高揚感に満足して得られた成果はわずか。貴重な時間を割いてくれた取材先に申し訳がない。読者が求めているのは、事業活動に有益な情報だ。インターネットで調べれば分かる情報ではない。

自己反省が続く。

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Posted by ぐずもち