出張帰りの新幹線で飲むビールは、悪魔的な美味しさに違いない
東京駅から京都駅に戻る新幹線の車内で嬉しそうな声が聞こえる。
「こんなところでお店広げちゃって悪いね」
初老の男性が、同じシート列に座る別の乗客に一声かけたようだ。
私の斜め後ろに座っているため、チラッとしか見えていないが、座席のテーブルにはお弁当とビールが置かれていた。
通路を挟んで座った同僚から、近くの売店でお目当ての弁当が買えることを教えてもらったこともあり、気分が高揚したのだろう。
仕事が終わった解放感もあったに違いない。その嬉しさを誰かに伝えずにはいられないことに、微笑ましくなった。
「あっ! お弁当だ!」
出発直前で隣に座った50代ぐらいの男性は、新横浜駅に到着する手前でお店を広げた。
17時台の便ということもあり、やはりお弁当とビールの組み合わせだ。
新横浜駅で乗車した3歳ぐらいの男の子は、「あっ! お弁当だ!」と一言。男性は気にすることもなく、黙々と食べる。
とても馴れた様子だ。
食べ終わった後は、完全なくつろぎモード。スマホを片手に、ゆっくりとビールを味わっていた。
同じ列で反対方向に座っている会社員も、ビールを飲んでいる。
こういった光景を見ると、いつも「週末の夜、新幹線内の飲酒率は70%に達しているのではないか」と錯覚しそうになる。
まわりに迷惑をかけなければ、存分に楽しんでほしいという気持ちになる。
一週間戦いきった戦友のような気分だ。
大人の醍醐味
お酒がまったく飲めない私にとって、新幹線で一杯を楽しめる人たちは憧れの存在である。
大人の醍醐味だからだ。
波平さんが酔っ払って持ち帰る寿司、仕事で頭をかきむしりながら吸うタバコぐらい「大人といったらこれ」というイメージがある。
邪魔されない時間に、好きなものを飲み食いできる。
長年の社会人のなかで身についたストレス解消法の一つに違いない。
それぐらい「お店を広げる行為」は、新幹線の風物詩になっている。
その隣では、私がお茶と煎餅を食べている。
本当はチップスターを食べたかったが、ダイエット中のため我慢した。
それでも週末と出張帰りは、なんとも言えない解放感に満たされる。
こういうのも幸せなのかもしれない。
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